オープンゼミのご案内

「乳幼児期から児童期にかけての『聴力の仕組み』の変化と音楽教育」

講師:志村洋子先生(同志社大学赤ちゃん学研究センター)
場所:場所日本女子大学新泉山館5階 坪能研究室
日時:2016年11月26日(土) 16時〜
志村洋子先生からのメッセージ
話し言葉は、「意味・内容」を伝達するだけではない機能を持って進化してきました。われわれ成人は話者が誰か?の情報である音声の「個人性情報」にとても敏感です。そして、話者の気持ちが表出された「感情性情報」も伝達しますが、それにも成人ばかりでなく乳児も敏感です。これは、胎児期後半からの音声情報の聴取経験が基盤になり、乳児期の親子の音声情報のやり取り、マザリーズ(mother+ese)と呼ばれることが多いのですが、単に音響特性が対成人会話音声と異なるだけではなく、子どもへの「感情」が豊かに載った音声のやり取りだったからです。(なお、最近では、「母」であることに偏らないようにするため、マザリーズではなく、IDS(Infant Directed Speech)の語が多く使われています。)音響特性の具体的な特徴は、下の通りです。

・F0平均値の上昇→発話の声全体が高い

・F0変化範囲の拡大→抑揚が大きい

・発話速度の低下→ゆっくり話す

・潜時の変化→間をとり相手の反応を待つ

・繰り返しの多用→同じ言葉を繰り返す

こうした言語環境の中で、児童期にかけて子どもは、「一人前の話者」に成長していきますが、その発達過程での「聞こえ」についてはまだ十分研究されていないこともあり、音声の聞き取りのスタイルが成人と異なっていることに気が付かないまま、養育や保育が行われていることが分かってきました。

特に音楽にかかわる保育・教育は児童期の活動を「優しくした」内容で進めることも多く見られます。幼稚園や保育園での一斉歌唱や、が、子どもの耳に無理を強いていることが示唆されます。つまり、周囲に多様な音が背景雑音としてある場での「必要とされる音」の聴取は、乳幼児から児童期前期までは、まだ無理な状況が分かってきたからです。

ゼミでは、上記のIDSについて、また聴力の発達過程の視点から、保育・幼児教育の場での「音楽教育」が、どのようなものであれば子どもに見合ったものになるかを、皆様とご一緒に検討したいと考えています。


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